見沼たんぼコラム

見沼たんぼの貴重な水田を次世代へ ~見沼ファーム21の歴史を振り返る~

島田 由美子さん
島田 由美子さん
特定非営利法人 見沼ファーム21
理事長

見沼田んぼを守るために

普段は見沼田んぼの「水田保全のために」を活動の柱として、米作りをはじめとした農業体験などを提供する「見沼ファーム21」というNPO団体で活動を行っています。
見沼ファーム21は任意団体として発足以来、20年以上の活動実績がありますが、現在の活動のもととなった私の保全運動の始まりは1986年、昭和61年までさかのぼります。
当時、見沼田んぼの北部にごみ処理場を作るという見沼田んぼエリアの開発計画が進行しており、それを阻止するために声を上げたことが始まりとなりました。当初は田んぼや農業のことについてもほとんど知らなかったのですが、活動を通じて徐々に日本の原風景である見沼田んぼの歴史や価値に気づき、見沼田んぼの良さを広めていこうと活動を始めました。その後県などにより見沼田圃の「保全・活用・創造」を目的にした基本方針が定められ、県の公有地で県民参加型の体験水田・米づくり活動をスタートさせるため「見沼ファーム21」が誕生しました。

はじめは15~16人ほどの規模でしたが、今では100人を超える人が見沼ファーム21のメンバーとして活動しています。

見沼田んぼの魅力

・まず1つ目に、都心から近い首都圏の三大緑地として、自然が豊かなだけでなく、農地・農業があり、その体験ができるということがあげられます。
見沼ファーム21で行っている米作り体験も、これまで米作りをしたことがなかったような人が大半で、初めは私自身も同じでした。しかし“田んぼを耕し、種をまき、収穫する”という農業の営みの中で、田んぼに親しみ、畦道に座っていると、ふと、人々は昔からこういう暮らしをして、今日まで農業をつないできたのだと、実感することができました。
自然そのものも重要で、普段の生活とは違う農業にふれあい、土に向き合っているうちに、時間に追われる忙しい日々や、悩み事を忘れて癒されるなど、新たに参加した会員や、米作り体験に参加してくれた方々からも、そんな声を多く頂いています。

・農業が息づく場所として、貴重な農業文化が残っているのも魅力の1つです。
脱穀後の藁を積み上げて保存するための「藁塚」を見沼地域では「フナノ」と呼ばれていたそうです。しかし50数年前にフナノは途絶えてしまいました。稲作の副産物である藁は様々に活用され、昔から日本人の暮らしに根付いていました。「地域の暮らしの伝統や歴史の一つであるフナノがこのまま忘れ去られていくのはもったいない」と考え、このフナノを復元しようと会員で相談し、昔、フナノを作ったことがあるという農家の方に指導を頂き、見沼田んぼで収穫した稲藁を使い、2009年に50年ぶりにフナノを復元しました。その後フナノは「貴重な見沼田圃の文化遺産」として賛同者と「保存会」を結成、隔年ごとに作成しながら保存、継承しています。

・見沼田んぼの水田や斜面林、用水路などの環境には数多くの生き物が生息しています。
米づくり体験活動に参加している子どもたちと田んぼに生息する生き物や畦の草花の観察をし、記録を毎年行っています。
田んぼに入る、という経験がなかなかできない現在、子ども達が見たこともない生き物とふれあい、いろいろな発見をしてくれる貴重な機会となっています。
年5回発行している「見沼こめこめ通信」では見沼たんばや米づくりの解説の他「見沼たんぼの生きもの調べ」の観察結果をまとめて紹介しています。

これからの見沼田んぼ

島田 由美子さん農家の高齢化等に伴い、水田の減少などが現在進行形で進んでいますが、都会の近くながら土に触れあい、リフレッシュできる場所として見沼田んぼを守り、農業体験を続けていきたいです。身近な生活の近くに存在する農業をもっと知ってもらい、地産地消を推進し、生産者と消費者が世代を超えて繋がっていけるような場を続けていけたらと思っています。
見沼田んぼの保全活動のため、見沼ファーム21としてはもっと若い方に会員になってもらいたい。また見沼田んぼの未来と農業を本気で担えるための「場」や「仕組み」を作ってほしいと願っています。